雄大な湖面に紅葉が映える秋の名勝。
九つの頭を持つ龍という名前の九頭竜湖。もともと福井県大野市を流れる九頭竜川の流域にあるため、その名前が付けられました。九頭竜湖は、1968年(昭和43)に九頭竜川に建設された九頭竜ダムのダム湖として、豊富な水量をたたえています。
自然に抱かれた山間の湖は、四季とりどりに木々の緑が美しく湖面を覆い、目を見張るばかり。10月中旬になると日を追って木々が色づき、穏やかな湖面が黃、橙、赤の秋の色に染まります。昼夜の気温差が大きいため、紅葉が際立って鮮やかです。九頭竜湖に架かる全長266m箱ケ瀬橋は、通称「夢のかけはし」と呼ばれ、優美な姿を見せています。この橋は、本州と四国を結んでいる瀬戸大橋の試作品として建設されたもの。周囲の緑に溶け込んで、静かに湖に寄り添っているように見えます。
山間の川から生まれた「九頭竜」の伝承。
九頭竜という名称が川・湖・ダムにも使われていますが、その名前の由来はいろいろな説があります。一つは9世紀後半、平泉寺の白山権現が衆徒の前に現れ、その尊像を川に浮かべたところ、九つの頭を持つ龍が現れ、尊像を捧げいただいて流れを下って黒竜大名神社の対岸に着いたといい、それ以降、この川を九頭竜川と呼ぶようになったという伝承があります。
もう一つ、10世紀半ば、国土を護るために国の四隅に四神が置かれ、そのなかの北の隅(越前の崩山)に黒竜大明神が置かれたことから、その前を流れる川を「黒竜川」といい、時を経て九頭竜川と呼ばれるようになったともいわれます。さらに、この川は急峻な地形を流れ、上流は多雨地帯でもあることから、古くから氾濫を繰り返し「崩れ川」と呼ばれるほど。それが九頭竜川になったという言い伝えもあります。その川の流れから生まれた九頭竜湖は、今は穏やかな湖面を見せています。